お薬ニュース2月号 製薬合併の意外な一面

連日、ニッポン放送株の争奪戦が話題となったこの2月でしたが、その影で医薬業界で注目されるニュースがありました。

2月19日の日本経済新聞のスクープを皮切りに、報道各紙が三共株式会社（以下、三共）と第一製薬（以下、第一）が今度の10月に「統合」される報道がされたのです。

でも、このふたつのニュースを良く調べてみると、意外なところで共通の話題によって結びつ三便宝く事になるのです。

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統合と合併の違いとそれぞれのスタンス

国内でも大手と呼ばれる規模の合併劇に業界は注目したものでした。そして、今度の四月に、合併により誕生する新しい会社との比較に目が向くのも自然の流れのようです。

今度の10月に「統合」する三共と第一、この4月に山之内製薬（以下、山之内）と藤沢製薬（以下、藤沢）の「合併」から誕生する新会社アステラス製薬とは違う形になりそうです。まずはそれぞれの言葉の違いからみてみましょう。

■三共と第一の統合ケース
共同持ち株会社を作り、その子会社として第一と三共が存在する形でスタートするようです。

■山之内と藤沢の合併ケース
社名もアステラス製薬とし、組織も再編して新たにスタートをきるようです。

そして、新しくできる企業の規模を見てみると年間の売上高が1兆円に届きそうな規模となり、狼1号製薬企業国内1位の武田薬品工業株式会社にせまります。様々な報道もこの三つどもえの勢力構造をキーワードに行なわれています。

医療現場からみる両社の関係

これまでの製品ラインナップから考えると、消化器系を代表とする総合メーカーの山之内と高脂血症をはじめと威哥王する生活習慣病関係のラインナップが多い三共が競合し、抗生物質の藤沢と合成抗菌薬の第一の競合になり、まさにライバルといった図式になることが予想できます。

最初にHMG-CoA還元酵素阻害薬という働きの高脂血症薬を作ってきた三共ですが、いまはその特許も切れ後発品メーカーとの生存競争になってしまっています。その分野のシェアは、今は山之内の製品にとって変わりつつあります。

また、抗生物質、合成抗菌薬の分野で考えてみると、病原菌に対する強さが期待できるニューキノロン系合成抗菌薬の主流を占めていた第一の製品も、そろそろ世代交代の印象を受けます。杏林製薬の競合品や、ニューキノロンに匹敵する強さがある、藤沢のマクロライド系抗生物質などが注目されています。今の所は、このライバル達の副作用報告で足踏みをしている状態ですが、第一の製品にとって世代交代にありつつあることはなんとなく感じられます。

国内の大型統合で勢いがつくのでしょうか？

日本の医薬品市場は世界第2位といわれていますが、これは国民皆保険制度だからとも言えなくもありません。医療保障が個人や働く企業に依存しているアメリカなどとはちがい、誰もが平等に医療サービスを受けられるかわりに、医療サービスを使いすぎてしまう傾向にあることも問題となっています。

増えつづけている医療費も2025年には、医療費が今の30兆円のおよそ倍になることが予想されていますが、その前に、すでに2015年には国民の4人に1人が65歳以上の高齢者になり、保険料の収入の問題が指摘されています。その保険制度の見直しがされ、国や行政機関の動きには肥大化する医療費を何とか減らそうとする基本的なスタンスがあります。負担割合が増えたり、医療費の償還払い制度が実施されたりすると、これまでの使いすぎ医療が是正されマーケットの拡大はあまり多くないかもしれません。

それよりも、伝統医療が今でも行なわれている地域がある中国やインドのマーケットは、圧倒的な人口の多さと最近の日本に迫る国内総生産から近代医学の普及が必至です。製薬業界も中国あるいはインドのマーケットを視野に入れながらの動きになっていることと思います。

世界に目を転じると、グローバルメガファーマの動きの方が注目されそうです。実際のところはファイザー（米）やサノフィ・アベンティス（仏）、グラクソ・スミスクライン（英）に比べると売上高で5倍くらいの格差があるのが現実です。膨大な利益を研究開発費に回して世界の医薬品業界を牽引していく傍らで、日本の製薬メーカーの生き残りは以前厳しいといえそうです。

世界が狙う日本の製薬企業

日本でも2006年の商法改正で、外国企業が株式交換により日本企業を買収できる「三角合併」が解禁され、外資系企業による日本企業の買収がしやすくなると考えられています。株式交換による買収は海外の大型M&Aの主流となっているようで、アメリカのファイザーによるファルマシアの買収劇もこの方法で行なわれたようです。昨年のサノフィによる敵対的買収によって誕生したサノフィ・アベンティスなど、その規模で日本企業が狙われたらひとたまりもありません。

三共と第一の統合やアステラス製薬の誕生は、この2006年の法律改正を見越してのことだと思われます。そして、向える2006年頃には国内だけでなく外資系企業によるM&Aが進む事が予想できます。

ライブドアとフジテレビのニッポン放送株の争奪戦は、日本の大手企業でも外資系企業の資本によればひとたまりのない所を露呈しています。そして、商法の改正が行なわれている所も浮きぼりにしました。政府による慎重論も話題になっていますが、このまま進むとしたら、製薬業界でなくてもあなたの会社がニッポン放送のように報道を賑わす事になるかもしれません。

そして、いつもは理系のあなたも、苦手かもしれませんが商法改正や経済ニュースにも目を通しておいた方がよさそうですね。